ベンダー交渉

ベンダーとの交渉⑧ 【 予算・スケジュールオーバー問題 】

どうも、木谷です

前回の記事では、ベンダーとの契約での注意点・トラブルなどをまとめました

今回は、ベンダーと一番揉めやすい「予算・スケジュールオーバー問題」について触れていきたいと思います

契約後の予算オーバー

少し前に、ベンダーの選定で予算はしっかり決めたと思います

しかし、いざプロジェクトが進んでいくと予想外のことばかりです

とくにITプロジェクトが大きくなればなるほど、問題は起こりやすいです

特に、予算面での問題を未然に防ぐために対策をしていきましょう

予算とスケジュールが大幅に膨れ上がる

とあるユーザー企業で実際にあった問題です

当初5000万円の予算でしたが、工程が進むにつれて金額が膨れ上がり、1億円を超えてしまうのです

スケジュールもオーバーしており、当初よりも半年遅れになってしまいそうな勢いでした

実はこのプロジェクトはユーザー企業が力を入れていて、メンバーも主力級の精鋭揃いでした

それなのになぜこのようなことになってしまったのでしょうか?

ずばり「多段階契約」に原因があったのです

要件定義フェーズだけでは最初の見積もりの金額通りに発注しています

ところが、要件定義を進めていく中で、スコープが広がり、外部設計においても画面や帳票が想定よりも多く複雑となったため、内部設計にも手を加える必要がでてきました

そうして、それ以降のフェーズもそれぞれ当初の見積もりを大幅に上回る金額となったのです

そのユーザー企業は途中で断念するわけにも行かず、しぶしぶ追加費用を払いました

一括契約か二段階契約にする

予算が後に大きく膨らむ要因として多段階契約がキーワードです

システム開発には、「要求定義」「要件定義」「内部設計」「外部設計」「プログラミング」「テスト」「運用・保守・メンテナンス」などいくつかの工程があります。
このすべてを一括して請け負う契約方式を一括請負方式と言います。
これに対して、工程ごとに最適な方法(「請負契約」が適切な工程なのか、「業務委託契約」が適切な工程なのか)を判断してプロセスごとに個別契約を順次締結する方式を多段階契約方式と言います。

引用 〜 アイミツ

ずばり、プロジェクトを数回の工程に区切ってそれぞれ契約を交わしていくというものです

ポイントは、プロジェクトスタートの段階では全体の予算が確定せず、後になって分かるというものです

ですので、自社で予め決めていた費用対効果の分析もまるで意味がなくなるということです

多段階契約はベンダーにとってメリットの大きい契約です

スコープが拡大してもベンダーはその分を上乗せして見積もればよく、ベンダーにはリスクがありません

逆に自社は費用が不明なので大きなリスクになります

一括契約では、その逆ですべての工程を一括で契約する方式で、最初に金額とスケジュールをベンダーと確定できるため自社にとってメリットの大きい契約となります

多段階契約の図

出典 : business Lawyers

また、一括契約は小規模なプロジェクトで交わされることが多いです

多段階契約は、主に大規模なプロジェクトやスケジュールが不明瞭な時に交わされます

例えば、単純に大きな会社のシステムでは期間が長すぎてすべてを事前に把握できないですし、AIを使ったプロジェクトは先が読めないこともしばしばあります

そのような壮大なプロジェクトですと、後にベンダーが人員を割かなければならないことになり、大幅な赤字になってしまうこともあるのでベンダーのリスク回避のため多段階契約がとられます

しかし多段階契約では、先ほど挙げた例のように費用が莫大になるリスクをはらんでいるので、GALではベンダーと自社の折り合いをつける形で「二段階契約」を推奨しています

小規模なプロジェクトは一括契約、大規模なプロジェクトは二段階契約

交渉としては、自社で最初に一括契約を希望します

小さいプロジェクトならばベンダーも受け入れるでしょうが、大きいプロジェクトとなるとベンダーも渋ります(六段階契約を提案してくることもあるでしょう)

そこで両者が妥協する形で二段階契約に持ち込むのがベストです

心理学的に、交渉は最初に提示した方が基準となりますので、はじめに切り出すようにしてみてください

二段階契約の手順

では、大規模プロジェクトをされる方向けに二段階契約についても書いていきます

多段階契約の図

出典 : business Lawyers

最初の契約を「要件定義」フェーズとし、2回目の契約は「基本設計」〜「受入」フェーズとします

要件定義フェーズでは構築するシステムのスコープを確定させる工程です

スコープが膨らんだとしても、要件に優先順位をつけた上で、自社とベンダーで調整を行っていきます

全体の見積もり金額を見ながらスコープを最終確定させることができます

なので、要件定義フェーズが終わればそれ以上プロジェクトが膨らむリスクが少ないため、ベンダーにとっても安心できます

また自社としても2回目の契約で全体の金額とスケジュールを確定させることができるのです

二段階契約はユーザーとベンダー双方にとってメリットの大きい契約と言えると思います

まとめ

予算・スケジュールオーバーを事前に防ぐ

小規模プロジェクトは一括契約、大規模プロジェクトでも二段階契約に抑える

最初は自社から一括契約を提案する